金属製ボールがレンジで使える?




金属製のボールを電子レンジに入れるなんてとんでもない、火花は散るし危ないじゃないか、そんなの常識じゃないかと叱られそうですね。

私の物つくりを支えてくれている道具たちのひとつに、フランス製の〈18-10〉ステンレスのボールがあります。たくさんの長所があって使い心地がよく、重宝しているものです。これはなんと電子レンジに入れて使えるのです。

〈18-10〉というのは、鉄の合金であるステンレスに含まれるクロムとニッケルの量をあらわしていて、クロムが18%、ニッケルが10%ということのようです。日本で一般に売られているステンレスボールはほとんどが〈18-8〉のステンレス製で、これはもちろん電子レンジには入れてはいけません。
ところが、〈18-10〉のステンレスになるとレンジのマイクロ・ウェイブに反応しないようで、レンジで使えて大変便利です。だいたい数字が明記してありますが、分らない場合は磁石をくっつけてみます。100パーセントそうだとも言いきれませんが、〈18-8〉ステンレスは磁性体で磁石がつき、〈18-10〉ステンレスは非磁性体で磁石がつかないようです。


使ってみて気がついたいくつかの注意点を添えておきます。

1.ボールの外側や上のほうに水分や汚れがついていると、異常に熱くなったり焦げたりすることがあります。必ず清潔で乾いたものを使います。
2.ラップをつけたり、プラスチックや金属のへらなどを一緒に入れると、材質によっては溶けたり焦げたりして危険です。
3.温める程度の利用にとどめて、いわゆる加熱調理には使わないほうがいいようです。

私はバターを温めたり、チョコレートを溶かしたりするのに使っています。チョコレートでは、レンジで溶かして、そのボールをそのまま直火にかざしたりもできてとても便利です。


このフランス製のボールはほかにもいい所がいくつもあるので、つけ加えておきます。

1.材質が固く傷つきにくい。私が30年以上使っているものもありますが、へこみも目立った傷もなく、ほとんど新品同様です。ホイッパーやハンドミキサーの羽根は〈18-8〉ステンレスより固いステンレスであることがほとんどなので、〈18-8〉ステンレスのボールで使うと、傷ついて材料に色が出たりすることがあります。〈18-10〉ステンレスならそんな心配はありません。また、酸にも強く、レモンなど酸味の強いフルーツのジュースやピューレにも安心して使えます。
2.汚れが落ちやすく洗うのが楽です。
3.底が平らで安定がよく、鍋に湯せんにかけるのにも丁度いい形をしています。
4.平らな底から少し斜めに立ち上がる側面の部分が真っすぐでカーブしていないので、木べらやホイッパーなどで側面についた材料をけずり易く、いいあんばいです。

また、ちょっと気づきにくいのですが、この側面の立ち上がる角度が実に絶妙で、混ぜる時にボールの中での材料が外側に逃げていく感じがなく、混ざり方がとてもいいのです。
お菓子つくりでは、粉を混ぜたり泡立てた卵や生クリームを混ぜたりするのに、なるべく少ない回数で混ぜたほうがよいものも多く、よくできているものだと感心させられます。
フランス菓子の特徴のひとつである、口どけの良さやさっくり感を作り出すことを、陰で支えているのだなぁと思えるくらいです。