シェソアのスポンジの作り方(2)

シェソアのスポンジの作り方(1)の続きです。


〈混ぜる〉
1. ふるっておいた粉を3~4回に分けて入れ、ゴムべらか木べら、あるいは金属のへらなどで混ぜます。手伝いが居る場合は、さらさらと連続的にふり入れてもらいます。粉をいちどに加えるとダマになりがちです。
混ぜ方がポイントです。右利きの場合、ボールの右はしから始めて、ボールの直径をたどって中心を通り、左はしまで動かします。へらを押しつけてボールの側面も底も削りとるようにしながら、最後はへらを持った手の手首を返して、底の生地を上に持ってくるようにします。粉はボールの底や側面にへばりつきますので、その粉をよく削りとりながら上下の生地を入れ替えていくイメージです。
そうしたら、左手でボールを少し手前に回し(円周の1/6位)動かして、混ぜる場所を替え、同様の混ぜ方を連続的に続けていきます。連続的にやると、ボールを回す左手がへらを動かす右手を迎えに行くような混ぜ方となります。
泡立てたものと何かを混ぜるときの、重要な基本的な混ぜ方のひとつなので、ぜひマスターしてください。

2. 粉が完全に見えなくなるまで、充分に混ぜます。この目の細かいソフトなスポンジの場合、多目の砂糖が入り、細かい強い泡立ちになり、かつ加える粉の量も少なめなので、混ぜても泡は消えにくいはずです。もし泡が消えやすいようであれば、これまでの段階のどこかがおかしかったということになります。
また、充分混ぜているうちに、全体のかさが減ったり、色が濃くなったり、わずかでも粘りや固さを感じるようであれば、それは混ぜすぎの知らせです。混ぜすぎは、結果としてふくらみが悪くなったり、固くなったりする原因となります。全体の見た目の量と泡立ちの状態に注意を集中して、頭に焼きつけ、次に作るときに想いおこして下さい。

3. 次に、粉を混ぜたこの生地に、バターと牛乳を混ぜます。
バターと牛乳は合わせて溶かしておき、熱湯につけておくか、火にかけて、沸騰直前の温度(80度位)にします。この熱い〈バター+牛乳〉の中に、先の粉まで混ぜた生地の一部をすくいとって加えます。量は〈バター+牛乳〉の見た目の量の倍くらいです。
へらかホイッパーでおもいきり勢いよく速く混ぜます。完全に混ざったら、これを全部、粉まで混ぜた生地のほうへ加えて、全体をへらで切り混ぜます。混ぜ方は粉を混ぜた時と同じです。ゆっくり、注意深く混ぜます。
脂肪分は泡をよく消すはたらきがあるので、混ぜすぎないよう注意してください。混ぜ足りないのもよくありません。生地のつながりをむらのあるものにし、ところどころボソッとしたり、こわれやすかったりするスポンジになることがあります。

〈バター+牛乳〉を熱くして混ぜるのは、熱で泡がこわれるのではないかと、ちょっと抵抗があるかもしれませんが、実際は冷たいほうが泡を消しやすく熱いほうが泡を消しにくいのです。
また、生地の一部を混ぜるのはとてもいい方法です。バター+牛乳、あるいはバターだけを混ぜる場合でも、直接全部生地に加えて混ぜると、これは生地に比べて重いので底に沈み、なかなか混ざりにくく、結果として全体が混ぜすぎになることがあります。また、混ぜ終わってボールの底をさらうと、混ざりきらずに底に沈んでいたものが顔をだすことを避けることができます。この方法は、据え置き型の大型のミキサーでやる時に特に便利な方法です。

4. 混ぜ終わった生地は、ただちに用意しておいた天板、または型に移します。型に移した場合は、ざっと平らにするだけです。天板の場合は、パレット・ナイフで同じ厚みに平らにのしていきます。だいたい同じ厚みならいいのです。あまり神経質に平らにする必要はありません。パレットでたくさんさわりすぎると生地をいじめることになり、泡を消したり、ねばりを出したりすることになります。できるだけ少ない動きで厚みを整えるのが大事です。


〈焼く〉
1. ただちに充分温めておいたオーブンへ入れて焼きます。
時間はオーブンによって異なりますが、大体以下の通りです。この範囲をこえることもあります。生地の厚みが薄い場合はオーブン温度は高く、時間は短く、厚くなるほど温度は低く、時間は長くが原則です。

   天板の場合……10分~12分
   型の場合  ……25分~35分

大体ふくらんだあと、奥と手前の焼きむらがあるようであれば、前後を入れ替えてください。そっと手早くおこなって、庫内温度をあまり下げないよう注意してください。
ふくらんで焼き色がつき、真ん中あたりを軽くおさえてみると、おさえたあとがへこんだままにならず、戻ってくるようであれば、大体焼き上がりです。

焼き物は〈焼き〉が最もむずかしいといえます。オーブンは一台一台異なり、それぞれくせもあるからです。それに加えて、室温、湿度、季節、あらゆる外的条件によって、適切なオーブン温度、焼き時間も変化します。
まずは、とにかくよく見ることです。まわりばかりが濃く色がつくようなら、温度が高すぎるのかもしれません。逆に全体がなかなか色づかないなら、温度が低すぎるのかもしれません。焼き具合、乾燥具合はさわって確かめます。そしてもちろん食べて確かめます。
生地だけでなく、出来上がりのお菓子も食べてみて、このくらいが丁度いい、いや、ちょっと焼きすぎかな、もう少し焼いたほうがいいかなと、それまでのことを想いおこしながら確かめます。そうやって繰りかえしながら自分の感覚を調整して、つかんでいくしかありません。でも、これこそがものつくりのおもしろさだと私は思います。
まあ、少しくらい違っても、失敗などとは思わないことです。手づくりだもの色々できるさ、とおおらかに楽しむほうがいいと思います。予定とは違ったけれど、こっちのほうが美味しいじゃないか、ということもたまにはあったりしますから…。

2. 焼きあがったら、すぐ網(ケーキクーラー)に移して冷まします。型焼きの場合は型から取り出して、上下を返します。天板の場合はオーブンシートごと網にとって冷まします。
冷めてから、表面の皮は薄く切り取るほうがいいようです。天板の場合、裏返してオーブンシートをいったんはがし、再度裏返してから皮を取り去ります。クリームなどと組み立てた場合、スポンジの皮がクリームのほうにくっついてはがれ、できあがりのお菓子をカットした時や、食べる時に、お菓子がばらばらになってしまうことがあるからです。


以上、比較的ソフトな共立てのスポンジの作り方でした。おためしあれ。 Bon courage!(ボン・クーラージュ!)