お菓子作りは科学?

Q: 科学とか理論とかあまり得意じゃないのですが、お菓子作りに科学的な知識は欠かせませんか?

A:そうですね、結論からいうとお菓子でも料理でも科学的知識はあったほうがいいと思います。
ただ間違ってはいけないのは、科学や理論が先にあって、それにもとづいてお菓子を作るわけではありません。そうするとしばしば変なものができたり、おいしくないものができたりしがちです。それだと、とても難しいことに感じたり、面倒くさいことに感じたりすることにもなってしまいます。
順序が逆なのです。ちょうど会話と文法のような関係に似ています。文法が先にあったわけではありません。
お菓子作りが先にあって、それを手助けするのが科学や理論なのです。強力な手助けとなって結果もよくしてくれるのですから、利用しない手はありません。

特に女性は理屈っぽいことが嫌いだというかたが多いようですが、思うほど難しいことではありません。お菓子作りの理論や物の性質が分かれば、失敗した時にもなぜ失敗したかが分かって、立て直しもきくし、色んな応用もできるようになります。
理科の実験や知的なゲームを楽しむつもりになれば、お菓子作りの楽しさ、面白さを倍増してくれるものだと思います。

実際にお菓子を作る時に、目に見えていることはわずかなのですが、その目に見えているわずかの情報から、その内側で何が起きているのかを、どう変化していっているのかを、イメージしてつかんでいくことが、物つくりには必要なのです。
そのイメージをつかむために、科学的知識が役に立つのです。目に見えないことが大部分なのだから、頭の中でイメージ(想像)するしかないからです。
そのような意味で、物つくりの作業とは頭の中の作業なのだと、私は思います。その頭から手に指令を送って、適切な手を加えていく、それに応じて物が変化をしていく、その変化をとらえて、また適切な手を加えていく、その連続が物つくりだと、私は考えています。
そこにこそ、物作りの面白さがあります。

ああして、こうして、こうするのだと、言われる通りに手を動かしているだけでは、ロボットと同じです。理屈がわかって、納得して、自分の頭でつくってこそ、「つくる」ということだし、本当の面白さ、楽しさがあると思います。実際、「あっ、そうなんだ!」と納得することは、とても気分のいいことなんです。

料理でも同じことだと思いますが、お菓子は特にシンプルです。お菓子の原材料は、砂糖と粉と卵とバターとその他の乳製品、果物とナッツ及びその加工品でほとんど成り立っています。主原料と言われるものは最初の4つなのです。そのわずか4種類の材料の分量や混ぜ方などのほんのちょっとした違いと、副材料との組み合わせなどによって、実に様々な多くのお菓子が作られています。
ですから、それらの材料の特徴、物理的性質、化学的性質を知っていることが、上手にお菓子を作るために重要であり、また、重宝でもあるということです。